コンセプトを設計し、施設名称のネーミングが完了した「グランピング施設温楽ノ森」。今回はそのコンセプトからデザインされたロゴについて詳しく解説します。
ロゴをデザインする
Office io では、ロゴをデザインする前に必ずコンセプトを明確に言語化します。
これはボクが「コンセプトのないデザインはただの落書き」という信念があるからです。そして、デザイナーであるhanaさんも、このコンセプトが自分のなかにしっかりと浸透していないとロゴ造形のアイディアがなかなか出せません。なのでioでは必然的にコンセプトを重視する制作スタイルになるわけです。今回の温楽ノ森のコンセプトについては、前回の設計がベースです。その上で、どうビジュアル造形をしていくかを大切にして制作を進めました。
まず、大事なポイントとして「楽しそう」であること。ここは外せません。なのでioとしては珍しく、少し色を多く使う構想にしました。コンセプトにある「イロトリドリ」の部分を端的に表現したかったからです。その上で、何かしら象徴的なモチーフを用意することにしました。キャンプ場であり、コンセプトを表現し、かつ可愛いらしく、女性に好まれるクリエイティブ…このあたりをいろいろ試行錯誤する中で、ioとしてはロゴ提案を2案にまで絞り込みます。一つは森をシンプルにビジュアライズした「木」のモチーフ案。そしてもう一つがキャンプ場の1日を自然の造形で表現した「日々」のモチーフ案の二つです。
A案
シンボル
B案
シンボル
ここで運営企業の代表である天川さんに提案。A、B案、どちらが良いか、話し合いました。ですが、残念ながら(笑)この案件をディレクションしているボクも、この経営者である天川さんも本来ターゲットとなるべき「2−30代の女性でママさん」ではありません。ボクらの判断で良いとされるデザインが左右されることは本位ではない。そこで、ツイッターでのアンケートを取るという手法を取り入れました。
戦略的SNSコミュニケーション
普通であれば、クライアントさんとの協議で方向性を決めるロゴデザインですが、あえてオープンにしていろんな人の意見、感想を求めるというやり方は新しい試みだったと思っています。もちろん、これを行うにはそれなりの条件があります。まず、クリエイティブ側に確固たる信念があり、外野の意見に左右されたり、日和ったりしない軸があること。そしてもう一つが、経営者と直にやりとりができ、感想や知見、感覚をダイレクトにシェアできる関係性と状況が構築されていること。
少なくとも、この二つが揺るぎない状態にできない限り、外野の意見はただのノイズになってしまいます。ただ人の意見を聞き、取り入れたら良いというわけではありません。この感覚が揺るぎないからこそ、例えばすごくシンプルに、ボクから天川さんに「それはデザインとしてやめた方がいいです」と伝えたこともあったりしました。
天川さんのボクらへのクリエイティブに対する信頼と、天川さんの経営判断に対してのボクらの信頼が少しずつうまく噛み合ってきたからこそのやり取りではないかと思います。そういう意味で、この関係性とシステムが構築できた部分では、「温楽ノ森のプロジェクト」は小さいながらも「デザイン経営」のような形で進められたモデルケースの一つになったのではないかと思っています。温楽ノ森のデザイン経営についてはまたこのプロジェクトが一段落したところであらためて詳しく語れたらなと思ってます。ご期待ください。さて、少し話がずれました。
このアンケートの結果、最終的にはA案が採用されました。中には「二つの案を混ぜたら良い」という意見もありました。これは想定の範囲内です。良さそうな二つを見ると、つい人はそれを混ぜたくなります。ですが、デザインとはその造形に到るまで、ありとあらゆることを考え設計しているわけです。それが文脈と呼ばれるものだったりします。やはり全てがトータル設計されたクリエイティブが揺るぎなく、またブレないわけです。残念ですが、コンセプトもデザインも「混ぜるなキケン」ですね。
ちなみに、もし混ぜるなら、アイディアの時点からやるべきです。ゼロベースでデザインやクリエイティブを設計するなら問題はありません。逆に言えば、そうでないと揺るぎないクリエイティブは生み出すことができないわけですね。ちなみに、ボクらがどちらの案でも、こだわったのは「グッズ化」までを見越したオブジェクトの展開イメージです。これがあることで、この先のクリエイティブがすべて統一イメージで制作可能になるわけです。
A案グッズ展開
B案グッズ展開
最終的に選ばれたロゴはA案。こちらのロゴをベースに、現地のプロダクトを含めたトータルクリエイティブ・ディレクションを行っています。ぜひそちらの記事もぜひ読んでみてください。